貝殻にはいろいろな色彩や模様をもつものも多いが、それらは色素によるものと構造色とに分けらる。前者は多様な物質からなる生体色素(biochromes)の一種で、殻形成時に外套膜縁の腺から分泌される。これらの色素の多くはコンキオリンと緊密に結合しているために分離が難しいとされ、色素本体についての研究は少ない。コンクパール(ピンクパール)で知られるピンクガイのピンク色など、一部の色はポルフィリンであるとも言われるが、ポルフィリン自体があまりに多様なものであるため、ほとんど説明になっていないとの指摘もある。また、殻の外面にある色彩は保護色であると考えられるものもあるが、巻貝には先のピンクガイのように殻口内面が鮮やかな色に彩られるものも少なくない。これらの色彩は貝が生きている時には外部からほとんど見ることができず、二枚貝の殻の内面の色彩はなおさら見えないため、他の生物の視覚に対するものとは考えらない。このような例では色彩自体には意味はなく、生体防御物質などの分泌があり、その結果として色が付いてしまうのではないかとの推定もある。

構造色は真珠などに見られる七色の色彩で、これは水平に何重にも重なった結晶の層間で反射した光が互いに干渉することで現れるが、個々の結晶自体は原則として無色透明である。ただ真珠層を構成する基質に種々の色素があったり、結晶構造の微細な違いや微量な物質の含有などにより様々な色の真珠層ができあがる。真珠層は、ほとんどの貝では殻の内面に形成されるため、生時は外部から見えない。また巻貝ではオキナエビスやアワビ、サザエなどの古腹足類で真珠層がよく発達するが、比較的新しい系統ではほとんど発達せず、二枚貝でも比較的古いとされるキララガイやアコヤガイ、淡水のイシガイ科などによく見られる構造である。真珠層の形成は他の構造より時間がかかるため、比較的寿命の長いものに発達するのではないかという説もあるが、かならずしも一致しない例も多い。