構造

いろいろな二枚貝の貝殻

殻本体は炭酸カルシウムの結晶とコンキオリンと総称されるタンパク質を主とする間基質からなる。その構造は、多数の結晶が間基質によって繋ぎ合わされたもので、結晶をレンガに、間基質をレンガを接着するモルタルにたとえると構造が理解しやすい。炭酸カルシウムの結晶は結晶構造によって、三方晶系の方解石(カルサイト:calcite)、斜方晶系のアラレ石(アラゴナイト:aragonite)、六方晶系のファーテル石(バテライト:vaterite)の3種に分けられるが、ファーテル石は自然界には少なく、貝殻に利用されるのも方解石とアラレ石の2種のみである。

貝殻を形成する結晶の並び方にもいろいろな種類があり、「~構造」という名前で区別されている。このうち方解石からなるものには海産種の稜柱構造(角柱構造)や葉状構造などがあり、アラレ石からなるものには淡水種の稜柱構造や真珠構造、交差板構造、均質構造などがある。稜柱構造は多角形の柱状の結晶が殻表面に対して垂直に並ぶ構造、葉状構造は水平方向に重なる構造、交差板構造は斜めに傾いた結晶の列があり、隣の列は逆方向に傾斜し、それらが交互に連続する強度のある構造である[1] 。また真珠構造は多角形板状のアラレ石結晶が何層にも重なった、レンガ積みのような構造となっている。

これらの構造は貝の種類や貝殻の部位(外面-内面や中心-辺縁など)によって使い分けられており、一個の殻に複数種が見られるのが普通である。また同じ構造でも貝の種類が違えばコンキオリンの粗密などにも違いがあり、強度その他も異なる。これらの構造は殻の破断面から観察することができる。それぞれの構造はある程度の層を成しているのが一般的で、それぞれの層はその構造から、稜柱層(角柱層)や真珠層などと呼ばれる。

このように貝殻は結晶構造や間基質が複雑に関係しあって形成されるため、殻質は系統によって大きく異なることもある。非常に硬くて丈夫な殻もあれば、間基質で囲まれた稜柱層(角柱層)のみからなり、薄質で柔軟なものもある。酸などで貝殻の炭酸カルシウムを脱灰すると、殻皮と間基質のみが溶解せずに残るが、基質の割合が高い殻では貝殻の原形がほぼそのまま残ることがあり、逆にアルカリを用いた場合には、基質が溶けて殻が部分的にばらばらになってしまうこともある。

殻皮は殻の外側を覆うキチン質の薄膜で、主として結晶形成の際の支持と環境水中への溶解防止の役割をもつ。特に殻の縁辺部での拡大成長における殻皮の機能は重要で、殻皮の縁が内側に折れ込み、これと外套膜の縁辺部がかみ合って環境水から隔離された微細な小室を形成し、イオン環境がコントロールされたこの中で、結晶成長が起こる。しかし中にはそれに止まらず、殻皮が様々に変化して毛状や襞状になって殻本体の概観を変化させているものもある。このような種類では、殻皮のあるものと殻皮を除去したものとの外見が大きく異なることがあり、たとえばカコボラは多肉質な質感の毛むくじゃらな殻をもつが、殻皮を除くと太い畝のある殻が現れ、イモガイ科では厚い殻皮を除くと鮮やかな色彩が現れるものがある。またタニシやカワニナなど淡水の貝類には殻本体が白色や淡色のものも多いが、丈夫な殻皮とその表面に付着した酸化物とで真っ黒に見える。また殻皮は時間ととも剥離したり脱落することも多く、殻皮が失われた貝殻は(特に環境水中にカルシウムイオンの乏しい淡水の貝類で著しい現象だが)表面から溶解侵食するが、通常は内側の外套膜から常に新たな炭酸カルシウム層が付加されるため、軟体部の内臓嚢が露出したり、殻自体が消えてなくなることはない。